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お盆2012

「笠地蔵」    菅 純和

 全国的にはどうか知らないが、大阪にはお盆は2度ある。8月15日を中心とするお盆と、8月23・4日の地蔵盆である。
 浄土真宗は弥陀一仏であり、阿弥陀如来以外の諸尊を礼拝することはないはずだが、地蔵盆のときの、地蔵菩薩だけは例外扱いされている。
 私の寺では、近在の6ヵ所の地蔵尊を、23日と24日に振り分けてお参りしていたが、その地蔵盆のことを「子どものお盆」と呼んでいた。お地蔵さんの前にむしろが敷かれ、その上に山盛りにお供えされた果物やお菓子をねらって、早くおつとめが終わらないかと、多くの子どもたちが、汗臭い身体を寄せながら取り巻いていた。
 今は、4ヵ所に減ってしまったことより、そうした子どもたちが見られなくなり、大人ばかりのお盆になってしまっていることが物足りなくもあり淋しくもある。
 地蔵盆が、子どもたちのお祭りであった頃に、忘れられない思い出がある。私自身も、確か小学校の低学年だったときだ。絵本で見た、「笠地蔵」の物語に心惹かれた。言うまでもなく、売り物の笠を雪の中で寒かろうと、お地蔵さんに被せて果報を得る話だが、子ども心に、爺さんが羨うらやましくてならなかった。
 思いが昂(こう)じて、とうとう物語の爺さんの真似をした。但し、季節は冬ではなく真夏である。近くにある6体の地蔵尊の中で、5体は木の厨子に納まっているが、裏の堤防の、阪急の鉄橋の傍に立つお地蔵さんだけは露天である。だから気の毒に思えた。
 カンカン照りの直射日光はさぞ暑かろうと、何か日除けになるものを考えた。そうすると、おあつらえむきのものが見つかった。庭のヤツデの葉である。大きさがお地蔵さんの頭部を覆うのに適当である。
 IMGbon.jpg
ある日、実行した。いよいよお地蔵さんに近寄って、ヤツデを被せるときの異様な興奮は、今もはっきりと記憶の中にある。
 そして夜、裏口の戸を叩く音を待った。今か今かと聞き耳を立てていた。今の小学生はどうであろうか。私は、お地蔵さんがご恩返しにと、宝物がぎっしりと詰まった箱を届けてくれるはずだと、本気で信じていた。
 当然、その夜は何も起こらなかった。次の日、お地蔵さんを見に行くと、誰かが外したのか、それとも風に飛ばされたのか、ヤツデの笠はなくなっていた。もう1度試みようという気は、それきり起こらなかった。
 それから長い年月が経って、今、私は住職として、毎年、その露天のお地蔵さんにお参りしている。必ず、ヤツデの笠を頭にのせたときの興奮と、その夜の落胆を思い出す。私に爺さんと同じ結果が訪れなかったのはあたりまえ。雪の中で爺さんがやったことは、無償の行為だった。最初から見返りなんて求めてはいない。一方、私はと言えば、爺さんと同じ宝物が欲しいという卑しい根性だった。欲の深い子どもだった。それも、爺さんと自分との違いが分かるまで相当の時間を要した。
 思えば、あれも欲しいこれも欲しいという、欲の連続であるこの人生。欲深い子どもがそのまま大人になり、今年の夏も、露天のお地蔵さまと向き合っている。

                  月刊誌『御堂さん』編集長 本派 光明寺住職  


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